研究概要 |
食道知覚において、陽イオンチャンネンルTransient receptor potential vanilloid (TRP)のはたす役割に着目し、その一つであるtype 4 (TRPV4)について研究をすすめた。これまでTRPV4の食道での発現については報告がないため、まずマウス食道におけるTRPV4の局在を検討した。対象としてC57BLワイルドタイプマウスを用い、食道を採取し、RT-PCR法、in situ hybridization法、免疫組織化学法を施行し、TRPV4のmRNA、タンパクの発現と局在を調べた。この結果、RT-PCR法ではマウス食道からTRPV4の発現認め、in situ hybridization法、免疫組織化学法では、食道上皮基底層にTRPV4の発現、局在を認めた。次にその機能としてマウス食道上皮初代培養細胞を用いて、ATP産生について検討を加えたATPアッセイにより、食道上皮初代培養細胞からATPの産生を認め、このATP産生は、TRPV4の選択的アゴニストである4α-phorbol 12, 13 didecanoateの投与により有意に亢進し、vanilloidレセプターアンタゴニストのRutherium redにより有意に抑制された。本研究により、TRPV4の食道での局在がはじめて証明された。また知覚神経の伝達物質であるATPを産生することも明らかになった。これらの結果は、TRPV4が食道知覚において主要な役割をはたしていることを示唆し、胃食道逆流症の病態解明につながる重要な知見であると考えられる。
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