研究概要 |
21年度、22年度にひきつづき、陽イオンチャンネルTransient receptor potential vanilloid(TRP)の一つであるtype 4(TRPV4)の食道での生理的機能について研究をすすめた。対象としてC57BLワイルドタイプマウスを用い、食道を採取し、RT-PCR法、in situ hybridization法、免疫組織化学法を施行し、TRPV4のmRNA、タンパクの発現と局在を再度確認した。またその機能解析として、昨年度のカルシウムイメージング法に追加するものとして、今年度はATPアッセイを行った。マウス食道上皮初代培養細胞を用い、食道上皮細胞からのATP放出を確認した。この食道上皮でのATP産生は、低浸透圧およびTRPV4の選択的アゴニストである4α-phorbol 12,13 didecanoateの投与により有意に亢進し、vanilloidレセプターアンタゴニストのRutherium redにより有意に抑制された。これまでの結果および今年度のATPアッセイの結果をあわせ、食道上皮には機能を有するTRPV4の局在が証明され、またTRPV4の生理的機能は、酸性条件下で低下することが認められた。この3年間の検討から、TRPV4は食道上皮の防御機構に関与し、その機能は酸の存在下では低下するという両者の関連性が明らかになった。これらの結果よりTRPV4は、現在注目をあびている胃食道逆流症の病態に関与する可能性が高いと考えられ、また胃食道逆流症の病態解明にむすびつく重要な知見であると思われた。
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