研究概要 |
今回の研究の仮説として、胃癌組織内に骨髄由来幹細胞がホーミングする、ということがある。Stem cellの一つである、骨髄幹細胞が胃癌の進展に何らかの役割を果たすのかという点や今後の化学療法の感受性の研究へ一つの手がかりなれば、大変意義深いと思われる。今年度の研究実績としてDigestion誌(Futagami S, et al, 2010)に報告した研究は、まさに骨髄由来幹細胞のマーカーの一つである、CD133陽性細胞がH.pylori感染胃癌モデルである、Mongolian gerbilの胃粘膜中に誘導され、H. pylori感染期間が長期に渡り、胃粘膜障害が進展するにつれてCD133陽性細胞数が増加することを確認した。また、興味深いことに、H.pylori感染モデルにおいて誘導された胃癌組織内にCD133陽性細胞が認められることがわかった。これらのCD133陽性細胞にはMCP-1のレセプターであるCCR2が発現しており、これら胃癌組織中に誘導されているCD133陽性細胞は同時にCCR2を発現していることが判明した。 こうした事実はstem cellの誘導にMCP-1/CCR2が関与しているという、過去の報告と一致する。これらの動物実験の結果をもとに、現在ヒト胃癌組織中のCD133陽性細胞の局在を検討している。
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