研究概要 |
今回の研究テーマは間葉系幹細胞による胃癌組織へのホーミング分子機構の解明であるが、我々は、H.pylori感染スナネズミモデルを用いて、誘導された胃癌組織内に骨髄幹細胞のマーカーでもあり、癌幹細胞のマーカーの一つとも考えられているCD133陽性細胞が誘導されていることを見出した(Futagami S, et al.Celecoxib inhibits CD133-positive cell migration via reduction of CCR2 in Helicobacter pylori-infected Mongolian gerbils.)。また、CD133陽性細胞はH.pylori長期感染群やH.pylori+MNU投与群における炎症が強い胃粘膜内により数多く浸潤する傾向があることが判明した。さらに、CD133陽性細胞はMCP-1により遊走し、MCP-1のレセプターであるCCR2がCDI33陽性細胞の表面に発現していることが、蛍光2重染色を用いて明らかにすることが出来た。このことは我々が胃癌組織中に発現しているMCP-1やCCR2が実際に幹細胞の遊走を制御するmoleculeの一つであることを明らかにしたもので、今後の治療戦略の糸口になり得るものと考えている。なお、こうしたMCP-1は機能性ディスペプシアという疾患においても重要な意味を持っていると考えられる。我々は、胃痛や胃もたれを主訴とする機能性ディスペプシア患者の十二指腸粘膜内に特異的にCD68陽性マクロファージが遊走しているとともに、CD68-/CCR2-陽性細胞がより有意に十二指腸粘膜内に浸潤していることを突き止めた(Futagami S, et al.Migration of eosinophils and CCR2-/CD68-double positive cells into the duodenal mucosa of patients with postinfectious functional dyspepsia)。
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