1年間の研究の結果、以下の事実が明らかとなった。TRPA1の発現の多くは胃への投射繊維を有するDRG及びNGニューロンで発現しており、さらにTrkA、SP、CGRP及びTRPV1と共存していた。一方、胃においてはSP、CGRP陽性神経終末に発現していた。TRPA1アンチセンスを臓腔内に投与すると、胃伸展刺激後の疼痛動作が有意に抑制され、同時にDRGにおけるERKの活性化が抑制された。また、この胃伸展刺激に伴うERKの活性化はTRPA1を含有しているニューロンで生じていることを二重染色にて確認した。最後に、TRPA1のアンタゴニストであるNC-030031を髄腔内投与あるいは腹腔内投与すると、伸展刺激に伴う疼痛関連動作が抑制されることがわかった。以上の結果は、Gutに発表した。 以上の結果より、急性内蔵痛の発現におけるTRPAIが重要な役割を果たしている可能性を示唆することができた。今後、病態モデルを用いた実験を通し、TRPA1の疼痛過敏発症メカニズムにおける関与を解明することで、TRPA1が機能性胃腸症治療における新薬開発のシーズとなる可能性がある。臨床における機能性胃腸症の診断及び治療はいまだ確立されていないが、患者数は年々増加の一途をたどっている。今後、病態モデルを用いた実験を通し、TRPA1の疼痛過敏発症メカニズムにおける関与を解明することで、TRPA1が機能性胃腸症治療における新薬開発のシーズとなる可能性がある。
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