研究概要 |
ヒト気管上皮細胞(NHBE)がBEGM(CAMBREX、USA)とDMEMが1対1で混合された培養液を用いてAir liquind Interface法で培養すると、細胞が扁平上皮化することを利用し、食道粘膜様の扁平上皮細胞層をin vitroで構築した。本培養系を用いて,酸や胆汁酸による食道上皮細胞のバリア機能変化を検討し,pH2の酸あるいは酸性(pH3)下の胆汁酸(タウロコール酸あるいはグリココール酸)がバリア機能障害を起こすことを明らかとした.また胆汁酸あるいは弱酸(pH3)のみではバリア機能障害が発生しないことを明らかとなった. これまで食道上皮細胞間間隙拡大がGERD症状発現と関係するとの報告から細胞間間隙拡大によるバリア機能低下が想定されていたが,今回の検討で細胞間間隙の拡大は,食道上皮基底層や有棘層で発生し,この部位はバリア機能がないことを明らかとし,顆粒層がバリア機能に重要であり,顆粒層には細胞間間隙拡大がみられないことが明らかとなった.すなわち食道扁平上皮層の細胞間間隙拡大とバリア機能低下は別の現象であることが明らかとなった.またこのバリア機能の制御には,タイト結合蛋白のクローディン(CLDN)4が重要であることがin vitroの検討から明らかとなり,ヒトにおいても逆流性食道炎患者の食道扁平上皮細胞層の顆粒層でCLDN4の局在変化を認めた. これまでにラット慢性逆流性食道炎モデルにおける自発運動量変化がディスペプシア症状の指標と鳴ることを報告しているが,今回,GERD症状発現のメカニズムとしてTAC-1の関与を検討することを目的として,本モデルにおける自発運動量の低下に対するTAC-1 siRNA髄腔内投与の効果を検討した.しかし,自発運動量の改善がみられず,ディスペプシア症状発現に対するTAC-1の関与を証明することはできなかった.
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