研究課題
大腸癌の化学療法において初めて導入された分子マーカーは抗EGFR抗体薬におけるKRAS遺伝子変異である。セツキシマブ投与を行った43症例の奏効率は25.6%、無増悪生存期間中央値は4.7ヶ月であった。KRAS遺伝子コドン12、13の変異の有無によりセツキシマブの抗治療効果を比較すると、奏効率は野生型で34.4%、変異型で0%、無増悪生存期間中央値は野生型で5.1ヶ月、変異型で3.0ヶ月であった。また、コドン61を含むKRAS遺伝子、BRAF遺伝子、PIK3CA遺伝子の3遺伝子の変異の有無によりセツキシマブの抗治療効果を比較すると、奏効率は野生型で40.7%、変異型で0%、無増悪生存期間中央値は野生型で6.4ヶ月、変異型で2.7ヶ月と治療成績がさらに開く結果となった。治療効果予測因子としてこれら3遺伝子の遺伝子変異解析の有用性が示唆される結果であった。CpG部位を含むプロモーターのメチル化を可視化できる細胞を樹立し、薬剤感受性とメチル化の状態を継時的に観察する計画に関してはまず、大腸癌において高頻度にメチル化されているMLH1やMGMT遺伝子のプロモーター領域をPCRにて増幅し下流に直接EGFP遺伝子あるいはTetR遺伝子およびTetオペレータ+CMVプロモーター下にEGFP遺伝子をレポーターとしてもつプラスミドにそれぞれ挿入した。大腸癌細胞株のうちHCT116,RKO,SW1417にJump-In systemにてPhiC31標的配列にR4インテグラーゼ標的配列を挿入した細胞を作製した。その後、脱メチル化されたプロモーターおよびレポーターおよびR4配列を有するプラスミドをR4インテグラーゼにより挿入し目的とする安定形質転換体を得た、しかし、この後東北大震災があり、停電により樹立細胞が死滅したため、再度樹立に取り組んでいる。
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癌と化学療法
巻: 38巻7号 ページ: 1079-1083