研究概要 |
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)は若年者を襲い、生涯にわたり治療の継続を余儀なくされる難病である。本邦において罹患数は、潰瘍性大腸炎10万人、クローン病5万人と増加の一途をたどり社会問題となっている。炎症性腸疾患の多くの症例は自己免疫疾患として捉えられ、ステロイドや免疫抑制剤など非特異的免疫制御による治療が施されるが、治療抵抗例が多く、また全身投与であるため治療薬の副作用が全身に起こり、現在の治療法では限界がある事は明らかで、新規治療法開発は急務である。現在、炎症性腸疾患においてステロイドなどの注腸療法が腸管局所療法として効果的であることが知られている。また、一度、腸管局所に流入したT細胞は再び腸管外に流出することはない。そこで、注腸療法を使用し腸管局所へ効果的に免疫抑制性CD4+CD25+T細胞を移入することにより、腸管局所では病的T細胞の増殖活性を抑制し、また、治療時に腸管局所へ移入された抑制性CD4+CD25+T細胞は腸管外へ流出することなく、全身での免疫抑制による副作用も抑えられ、非常に有用な新規治療につながると示唆され、これらの可能性を追求した。1)正常マウスのCD4+T細胞を免疫不全マウスに注腸を施行し、マウス腸内にCD4+T細胞が移入されることを確認した。また、正常マウスのCD4+CD45RBhigh T細胞の注腸を施行し、慢性大腸炎を発症することを確認した。2)注腸により炎症を惹起する機構はホーミングに関わるCCR7, S1P非依存性であることを確認した。
|