IL-24の産生誘導機構については、ほとんど明らかになっていなかったが、ヒト大腸筋線維芽細胞を用いた検討からさまざまな炎症性サイトカインのなかでもIL-1βに特に強いIL-24誘導作用を認めた。さらにアデノウイルスを用いてdominant negative c-Junを導入すると、IL-1βの効果は著明に阻害された。また、IL-1βはヒト大腸筋線維芽細胞のMAPキナーゼおよびPI3キナーゼの活性化を誘導し、MAPキナーゼとPI3キナーゼの阻害剤がAP-1の活性化を抑制したことから、IL-1βはMAPキナーゼ、PI3キナーゼの活性化を介したAP-1の活性化を通してIL-24を誘導していることが明らかになった。一方、IL-24の作用の標的となる細胞が何であるかをIL-24Rに対する抗体を用いた免疫染色により検討した。IL-24Rは大腸上皮細胞に恒常的に発現を認め、さらに炎症部位での増強は認められなかった。この結果は上皮細胞株を用いたin vitroの実験でも確認され、上皮細胞をサイトカインで刺激しても発現増強効果は得られなかった。このことから、IL-24の効果発現は腸炎局所においてIL-24の産生量によりコントロールされていることが明らかになった。ヒト大腸上皮細胞にIL-24を添加するとMAPキナーゼ、JAK1/STAT3の活性化が誘導されムチンの産生が誘導された。これまでの結果をまとめると炎症性腸疾患病変粘膜では、IL-1βの刺激に反応してIL-24が筋線維芽細胞から誘導され、そのIL-24は上皮細胞のIL-24Rを介してムチンの産生を誘導することにより防御的な作用を発揮している。すでにヒト型のIL-24が欧米では臨床応用されていることから、今後、炎症性腸疾患の治療薬としてのIL-24の重要性が明らかにされていくものと考えられた。
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