研究概要 |
1. IBD患者におけるHCMV再活性化機構の機序の解明:潰瘍性大腸炎患者、クローン病患者、健常人の末梢血から単球を単離、サイトカインに加えてLPS刺激による樹状細胞assay系を樹立させ、このassay系を用いて実験を継続している。TNF-αはCMVの再活性化促進に、IFN-γはCMV再活性化抑制に作用すること証明された。さらに、CMV再活性化されたマクロファージからは、CMV感染のないマクロファージと比較し、TNF-α, IL-12, IL-6の産生が増強されることが明らかとなった。現在、CMV再活性化が細胞内シグナルに与える影響を検討中である。 2. HCMV再活性化に伴う樹状細胞やマクロファージの機能変化の解析:上記で記載された樹状細胞やマクロファージをTNF-α刺激により分化させ(細胞内のHCMV-DNAが増加する)、その後TGF-βによる刺激を加えた。その結果CMVが再活性化された樹状細胞やマクロファージにおいては、TGF-βによる炎症性サイトカイン産生抑制が認められなかった。その原因として、CMV再活性化による細胞内でのSmadシグナルの抑制が確認された。 3. HCMV再活性化後の腸管内感染成立機構の解明:HCMVの再活性化後の局所腸管粘膜におけるHCMV粒子の感染成立の機序の解明を行う。線維芽細胞や血管内皮細胞はHCMV粒子の主たる標的細胞とされている。各種炎症性腸疾患の腸管炎症部位と非炎症部位において、HCMV受容体とされるEGFR, integrin αvβ3,およびPDGFの発現の差異について組織学的に検討した。その結果、腸管非炎症部位に比して、炎症部位で上記の遺伝子発現の増強が認められた。その後の解析により、線維芽細胞や血管内皮細胞、加えて腸管上皮においても上記分子の発現が増強していることが確認された。
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