研究概要 |
大腸癌細胞株KM12SMを用いてヌードマウス同所移植モデルと脾臓移植肝転移モデルを作製し、癌間質相互作用におけるヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の重要性について検討した。 KM12SMをヌードマウスの盲腸もしくは脾臓に移植し腫瘍を形成した後、蛍光ラベルしたMSCを尾静脈注射し、盲腸腫瘍部、肝転移腫瘍部へのMSCの取り込みを検討したところ、MSCは大腸腫瘍部、肝転移腫瘍部の間質へ集積していた。またMSCが腫瘍増殖へ与える影響を調べるため、KM12SMとMSCを混合し、ヌードマウスの盲腸もしくは脾臓へ移植した。盲腸移植モデルでは6週間後に、腫瘍重量、生存率、転移を評価し、また腫瘍標本を用いて微小血管密度(MVD)、PCNA labeling index(LI), apoptotic index(AI)を評価した。脾臓移植モデルでは4週間後に肝転移数を評価した。静注した盲腸移植モデルにおいて、コントロール(KM12SM単独移植)群と比較し、KM12SM+MSC(混合移植)群では有意に腫瘍重量が大きく(p<0.05)、生存率が低かった(p<0.01)。また、混合移植群においてのみ肝転移が認められ(2匹/12匹)、腫瘍組織において有意にPCNA-LIとMVDが高く(p<0.01)、AIが低かった(p<0.001)。脾臓移植モデルにおいて、混合移植群で有意に肝転移数が多かった(p<0.01)。腫瘍とともに移植されたMSCは、同所移植腫瘍部のみならず肝転移腫瘍部へも移動し癌関連線維芽細胞(CAF)マーカーであるαSMA、PDGFRβを発現していた。 以上より、腫瘍間質に取り込まれたヒト骨髄由来MSCはCAFに分化し、腫瘍増殖・進展を促進することが示唆された。
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