研究概要 |
1. ドナー由来骨髄細胞のうちMSC分画の傷害腸上皮の再生・修復に対する重要性を検討する. ブスルファン(BU)前処置投与下において,移植されたMSCは腸上皮細胞域に生着し,腸上皮バリア機能を回復させることで急性期に治療効果を示した.一方,非前処置投与下では,間質に生着し,筋原様細胞に分化し血管新生を促進することで回復期において傷害腸管の再生・修復を促進することを明らかにした. 2. MSCの腸上皮細胞への生着機序を明らかにする. BU前処置投与下および非投与下いずれにおいても,異性間移植におけるXY-FISH解析により細胞融合の所見は得られず,また,これまでの検討では,MET(間葉上皮転換)も否定的であり,MSCの直接の分化が示唆された. 3. MSC治療の信頼性を向上する. MSC治療は,BU前処置投与下では急性期に,非前処置下では,回復期にそれぞれ治療効果を認め,その効果は,MSC投与量に依存する容量反応関係を認めた。今後,他の実験腸炎モデルにおいても治療効果を確認し,移植効率,生着部位および分化誘導の制御に関しいっそうの解明が必須である. 4. MSC治療有効性機序を検討する. 腸上皮統合性維持は傷害腸上皮の細胞回転亢進やアポトーシス抑制に少なくとも一部は起因し,タイトジャンクションタンパク(claudin-2,-12,-15の発現)が回復した.これらの効果は,MSCのclaudin発現分布に対する直接効果というよりは,MSCが傷害クリプトの腸上皮幹細胞機能を亢進させることによる間接効果の可能性が示唆されたが,詳細について今後検討の余地がある.
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