クローン病の病態において、どのような腸内細菌がどのようなメカニズムでマクロファージ(Mφ)を活性化し炎症を惹起するのか、という命題に対して「腸管M□内での処理異常による活性化のトリガーが細胞内寄生菌ではないか」という仮説をたて、腸内フローラおよび腸管粘膜、粘膜内Mφを分子生物学的に解析することにより細胞内寄生菌の関与を明らかにするとともに、クローン病患者Mφでのオートファジー機能異常と細胞内寄生菌に対するMφの反応異常について明らかとすることを目的とした。今年度は正常腸管(大腸癌摘出時の非癌部組織)、クローン病・潰瘍性大腸炎切除標本の炎症部位・非炎症部位におけるオートファジーの動態をLC3の抗体を用い免疫染色法に重点を置いて研究を進めた。 粘膜固有層のMφに加え、細菌との応答にオートファジーが関与しているとされる上皮細胞にも注目したが、現時点で一定の傾向をつかむに至っていない。また、粘膜固有層リンパ球を分離し、さらにCD14陽性細胞を分離し、ウエスタンブロット法を試みたが、タンパク量の制限の問題とともに抗LC-3抗体の感度・特異度の問題から、やはり正常腸管・炎症性腸疾患で明らかな差は見出せなかった。このため、昨年から引き続き、LC3-GFPベクターを導入した末梢血単球を用い、(1)通常のオートファジー誘導方法、すなわちアミノ酸飢餓およびrapamycin(0.1nM-1000nM)添加、(2)Mφ特異的オートファジー誘導方法(3)recombinant human IFN-g添加培養の方法にてオートファジーを検出する系の確立を目指している。また、マウス腸炎モデルであるDSS腸炎、CD45RBhigh transfer model、IL-10ノックアウトマウスで野解析も開始している。
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