C型慢性肝炎の標準治療は、ペグインターフェロン・リバビリン(PegIFN・RBV)による抗HCV療法であるが、様々な治療効果や副反応から、治療前に治療効果を予測することは患者個人に適した治療を行う上で重要である。本研究の目的は、HCV NS3蛋白質二次構造多型性とC型慢性肝炎に対するペグインターフェロン・リバビリン(PegIFN・RBV)併用療法の治療効果についての関連性を検討し、抗HCV療法における新たなウイルス学的治療効果予測マーカーを見いだすことである。HCV-1b型感染で高ウイルス量(100KIU/ml以上)のC型慢性肝炎139例を対象とした。このうち、PegIFN・RBV両薬剤ともに、投与予定量の80%以上の投薬がなされ、かつ治療を完遂した75症例について検討した。HCV NS3蛋白質二次構造は、患者血清より得られたHCV NS3領域の推定アミノ酸配列に基づき、N末端側アミノ酸120残基の蛋白質二次構造をグループAとグループBに分類した。このHCV NS3蛋白質二次構造多型性と、PegIFN・RBV併用療法の治療効果の関連性について検討を行った。HCV NS3蛋白質の二次構造分類は、グループAが28例(37%)、グループBが40例(53%)、いずれにも属さない型が7例(10%)、であった。グループAおよびグループBの両群の患者間に、年齢、性、HCV RNA(アンプリコア法)、ALT、肝線維化ステージ、に有意差は見られなかった。このグループ分類とPegIFN・RBV併用療法の治療成績の検討では、ウイルスを排除できたsustained virological resonse(SVR)は、グループAでは18例(64%)に対し、グループBでは15例(38%)であり、グループAに多かった(P<0.05)。本研究により、HCV NS3領域アミノ末端120残基の蛋白質二次構造の多型性が、C型慢性肝炎におけるPegIFN・RBV併用療法の治療効果を予測する上で、有用なウイルス因子の一つとなりうることが示唆された。
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