研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)1b型のNS3領域蛋白質N末端120残基の二次構造に基づきHCV NS3グループ分類を行い、このNS3グループ分類とC型慢性肝炎に対するペグインターフェロン・リバビリン(PegIFN・RBV)併用療法の治療効果および肝がん(HCC)の発生リスクとの関連性を、前向き患者コホート研究にて検討した。対象は、HCV-1b型感染で高ウイルス量(100 KIU/ml以上)のC型慢性肝炎132例。NS3グループ分類は、Robson法によりグループA,B,Cに分類した。これら3グループに分類可能であった129例を解析対象とした。(1)NS3グループ分類とPegIFN・RBV併用療法の治療効果の関連性、(2)HCV NS3グループ分類と肝発がんの関連性、について検討した。発がん検討症例の観察期間は、PegIFN・RBV開始から肝がん発生時(発がん症例)/最終受診日(非発がん症例)とした。平均観察期間は5.9±1.2年。HCV NS3蛋白質の二次構造分類は、グループAが43例(31%)、グループBが71例(51%)、グループCが15例(10%)、混合型が3例(7%)、であった。グループA,B,Cの3群間に、性、年齢、ALT、HCV RNA(アンプリコア法)、線維化ステージ、に有意差は見られなかった。NS3グループ分類とPegIFN・RBV併用療法の治療成績の検討では、sustained virological response(SVR)となった症例は、グループA/Cに多く(52%)、グループBに少なかった(32%)(P<0.05)。本コホートのおけるHCC発がんは、グループAで1例(2,3%)、グループBで5例(7.4%)、グループCで3例(20.0%)であった(P=0.075)。NS3グループ別HCC累積発生率の検討では、グループC>B>Aで累積発生率が異なる傾向であった(p=0.06, Log rank test)。発がん症例9例のうち、8例はPegIFN・RBV療法のウイルス学的無効症例であった。本研究により、HCV NS3領域アミノ末端120残基の蛋白質二次構造の多型性が、C型慢性肝炎におけるPegIFN・RBV併用療法の治療効果の予測に有効であり、また、C型慢性肝炎患者の発がん予測に有用な指標となり得る可能性が示唆された。
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