研究概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症・進展に対し、Toll like receptors(TLRs)の関与を明らかにするため、in vivoの実験を中心に行った。【方法】野生型(WT)マウスの肝でのTLR2、TLR4の発現を調べるためin situ hybridizationを行った。WT、TLR2KO、TLR4KOの各マウス(生後7~10か月,雄)にmethionine-choline欠乏(MCD)食を摂取させ、脂肪性肝炎モデルを作成した。投与開始後経時的にマウスをと殺し、血液生化学検査(AST、ALT)と肝組織学的検索(H&E染色,steatosis gradeおよびinflammation gradeにて評価)を行った。WTマウスについては、MCD食投与後の肝におけるTLR2,TLR4の蛋白発現の変化を調べた。【成績】in situ hybridizationの結果、肝組織では主にKupffer細胞にTLR2、TLR4が発現されていた。MCD投与20週目において、TLR2KO群は、WT群に比べて有意に肝障害や脂肪化の増悪を認めた(P<0.01)。またTLR4KO群は、WT群に比べ有意に肝障害や脂肪化の軽減を示した(P<0.01)。ウエスタンブロッティングにて、MCD食投与後WT群の肝でのTLR2、TLR4の発現の変化はみられなかった。【意義と重要性】マウスNASHモデルにおいて、TLR2は肝の脂肪化および炎症を抑制し、TLR4は促進的に働くことが考えられた。特異的なin situ hybridizationにて、TLR2、TLR4はKupffer細胞に発現されることが明らかになった。NASHを含むヒトの非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)発症・進展にTLRsが関与する可能性があり、臨床的にも意義があると考えられる。
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