B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアからの肝発がんにおけるHBVの遺伝子変異の関与を検討するため、千葉大学大学院腫瘍内科学教室に保管されているB型慢性肝炎、肝がん症例それぞれ20例ずつの血清からHBV genomeを抽出し、PCR-direct sequencing法によりHBV PreS領域、Xプロモーター領域の塩基配列を検討した。その結果、肝発がん例においてXプロモーター内のG1317A、T1341C/A/G変異とpreS2欠失変異が高頻度に認められ、肝発がんと関連していることが分かった。これらの変異の生物学的効果については野生型のXプロモーターにそれぞれの変異を人工的に導入し、肝がん培養細胞HepG2におけるプロモーター活性をルシフェラーゼアッセイを用いて検討した。その結果、変異を導入するとプロモーター活性が2-3倍に上昇することが分かり、HBV増殖と関連することが示唆された。次にDNAメチル化機序として最近注目されている分子としてポリコーム遺伝子群の主要メンバーであるEZH2蛋白について肝がん組織を用いて検討した。肝がん患者86例から得られた癌部および非癌部肝組織のパラフィン包埋切片に対して抗EZH2抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、EZH2蛋白の発現状態を比較検討した結果、57症例(66.3%)において癌部におけるEZH2蛋白の高発現を認めた。またEZH2蛋白の高発現例ではがん再発のリスクが高いことが分かった。さらにリアルタイムRT-PCR法を用いた検討によりEZH2の高発現はmRNAレベルで発現が上昇していることが示された。HBVとEZH2発現調節との関連を検討するため、PCR法にて野生型HBV組み込みプラスミドからHBX遺伝子領域、PreS/S遺伝子領域を増幅し、クローニングを行った。
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