本研究はアンドロジェン受容体を肝特異的に発現するトランスジェニックマウス(Tg-AR)を作製した後、メチオニンコリン欠乏食と高脂肪食の投与により非アルコール性脂肪性肝炎モデルを作成し、脂質代謝と糖質代謝に関連する遺伝子群の発現量、シグナル伝達系にかかわる蛋白のリン酸化を調べ、アンドロジェン受容体の肝における脂質代謝、糖質代謝と種々のシグナル伝達系との関わりを明らかにすることを目的としている。 昨年度に作製したTg-ARは子供を増やすことができず、今年度は再度Tg-ARの作製を3度行ったが、tai1確認にて1回目(2011/6/24)0/65匹、2回目(2011/10/26、2011/12/20)0/37匹、3回目(2012/4/13)0/37匹とAR遺伝子が確認されなかった。Tg-AR作製がうまくいかない理由は不明である。 そこで、肝癌培養細胸のHepG2とHuh7にAR発現ベクターを導入し、Fatty Acid Metabolism PCR array(QIAGEN)を用いて脂肪代謝に関連する84遺伝子の発現変化をコントロールと比較した。HepG2とHuh7で上昇していた遺伝子は各々8、9個、低下していた遺伝子は各々49、30個で、両者で共通して上昇していた遺伝子はなく、共通して低下していた遺伝子はAcy1-CoA thioesterase 7とAcy1-CoA oxidase3の2個のみであった。これら遺伝子は、脂質酸化、異化に働くことから、これら遺伝子の発現低下は細胞質に脂肪酸が蓄積するように働くと推測された。ARの肝特異的ノックアウトマウスの報告では、脂肪酸合成亢進、脂肪酸酸化抑制を生じることから、予測された結果とは逆であった。
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