研究課題
【背景・目的】男性の膵癌罹患率は女性の約1.2-1.5倍とされている。男性ホルモンandrogen receptor (AR) signaling pathwayにはandrogenをligandとするandrogen-dependent pathwayおよびJak/Stat3などが関与するandrogen-independent pathwayが知られている。炎症性サイトカインIL6の上昇している膵癌は予後不良であることが知られている。IL6/STAT3/ARシグナル伝達経路を検索することにより進行膵臓癌に対する分子標的療法の標的を明らかにすることを目的とした。【方法】(1)ARの発現の比較的少ない膵癌細胞株MIAPaCa-2ほか培養膵癌細胞を使用した。ARのリガンドとしてDihydrotestosterone(DHT)を用いた。(2)DHTおよびIL-6の存在および非存在下にAR発現ベクターpSG5-ARおよびAR responsive elementを含むレポーターベクターpARE4-Lucを共に細胞内にCo-transfectionし、Luciferase assayにてARの活性化を検討した。(3)MAPK (ERK)およびJAK-STAT3の特異的阻害剤としてそれぞれUO126およびAG490を用いた。STAT3およびARはsiRNAにてKnock-downした。(4)各mRNAおよび蛋白発現の検討はReal-time RT-PCRおよびWestern blotを用いた。(5)またWound-Healing-Scratching Assayを用いて細胞浸潤能を評価した。【成績】(1)膵癌細胞株では様々なレベルでARおよびIL6 receptor (IL6R)の発現が認められた。(2)ARの活性化にSTAT3およびMAPK(ERK)の関与が考えられた。DHTの存在下でIL6により705Tyr-STAT3のリン酸化およびERKのリン酸化が増強し、ARの活性化も増強した。(3)更にARおよびIL6Rを発現しているKP-2細胞ではDHTおよびIL6の存在下で浸潤能の亢進が認められた。【結論】膵癌細胞にてIL6によりSTAT3を介したARシグナル伝達経路の活性化が認められた。特に癌発育進展への関与が示唆された。
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