研究課題
【背景・目的】肝細胞癌はその原因に関わらず発生頻度に男性優位という性差が存在する。男性ホルモンアンドロジェンレセプターシグナル伝達経路にはアンドロジェンをリガンドとするアンドロジェン依存性経路およびアンドロジェン非依存性経路が知られている。後者にはJak/STAT3,mitogen-activated protein _kinase(MAPK),phosphahtidylinositide 3 kinase(PI3K)/Aktシグナル伝運経路などが含まれている。Jak/STAT3およびMAPK pathwayの上流はIL-6 receptorである。これまでの研究でC型肝癌および膵臓癌細胞においそIL6はSTAT3を介してアンドロジエンセセプター活性化を増強することを明らかにした。B型肝癌におけるアンドロジェンレセプターシグナル伝達経路活性化について検討した。【方法】(1)B型肝癌のモデルとしてB型肝炎ウイルス(HBV)感染粒子を産生するHepG2.2.15細胞を使用した。(2)HepG2.2.15および親細胞HepG2におけるアンドロジェンレセプターシグナル伝達経路をはじめとする核内レセプターシグナル伝達経路関連分子をReal-timeRT-PCRarrayを用いて網羅的に解析した。(3)更に機能解析を行なうことによりHBV増殖、肝発癌に関与するシグナル伝達経路を検討した。【成績】(1)HePG2と比較しHepG2.2.15では核内レセプター関連84遺伝子中40遺伝子(47.6%)の発現がmRNAレベルで2倍以上亢進していた。(2)HepG2,2.15ではアンドロジェンレセプターシグナル伝達経路関連遺伝子のうちNR113、THRAP5、MED4、CRSP6、THRAP4、THRAP1、PPARBPの7遺伝子のmRNAレベルが有意に上昇し、この経路の重要性が示唆された。(3)Negative regulators of transcriptionの中ではHistone deacetylase(HDAC)6、HDAC4、HDAC5、Other transcriptonal factorsの中ではB型肝癌への関与が報告されているHDAC2の上昇を認めた。(4)特にアンドロジェンレセプターおよびHDACに注目し、アンドロジェンレセプターのsiRNAおよびHDAC阻害剤であるTrichostatin Aを併用することにより強力にB型肝癌細胞の増殖抑制が得られることを明らかにした。【結論】HBV増殖およびB型肝癌の肝発癌進展にアンドロジェンレセプターおよびHDACが深く関与しでいることが明らかとなった.これらの阻害剤はB型肝癌の治療に有用である可能性が示唆された。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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