研究概要 |
我々は当該研究において、ウイルスベクターによって特定の目的分子の発現を修飾することで、肝幹/前駆細胞の移植効率に与える影響を解析し、さらに、肝幹細胞がレシピエント肝臓を置換する際に目的分子がどのような動態をとるのかを解析することで、効率的に肝幹細胞を致死的肝不全の治療に応用しようとする研究を行い、今年度の成果として下記を得た。(1).マウス肝前駆細胞・肝幹細胞の分離、培養:マウス胎仔肝臓から初代肝幹/前駆細胞が高濃度に純化された画分を分取し、増殖もしくは肝細胞への分化を誘導する培養実験系を確立した。この中で、胎生中期マウス胎仔肝臓からCD13^+CD133^+CD45^-Terl19^-の分画を分取すると、より濃縮した肝幹・前駆細胞画分が得られることを発見した(Kakinuma et al.J Hepatol, 2009)。さらに肝幹・前駆細胞に対して、分化・増殖に関与することを予想している遺伝子の強制発現およびノックダウンを行った。その結果、転写因子Sall4は肝幹・前駆細胞の胆管細胞への分化を正に調節していることを示した(Oikawa et al.Gastroenterology, 2009)。(2).肝幹細胞を用いた細胞移植後の細胞動態の解析:研究グループは成体由来肝細胞を用いて、高度の肝キメリズムが得られる移植系を確立した。高脂血症モデルマウスであるApoE欠損マウスに対して、野生型のマウス胎仔由来肝幹・前駆細胞を移植したところ、高脂血症が治癒し、移植した細胞がレシピエントの肝臓内で1年以上にわたって肝細胞として機能することを示した(第95回日本消化器病学会総会にて発表)。さらに、成体マウス肝臓から分離した肝幹・前駆細胞についても検討し、移植細胞が長期間肝臓を再構築できることを示した(Kamiya et al.Gastroenterology, 2009)。(3).肝幹細胞移植時の肝臓置換に関わる分子の解析:研究グループが確立した移植系において、いかなる分子が肝臓の再構築に関与しているかを明らかにする研究を行った。その結果、MMP2欠損マウス由来の肝細胞はMMP2野生型マウスと比較して、移植後の肝臓再構成が遅延していることが明らかになった(第16回肝細胞研究会シンポジウムにて発表)。これらの成果に基づき、次年度も本研究を継続する予定である。
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