本年度は臨床的な検討から、C型慢性肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリン併用療法においてHCVゲノムのNS5A-ISDR、-IRRDRやコア領域変異(R70Q)(L91M)が治療効果と関連していることが明らかにした。さらにコア領域の変異は、疾患の進展とともに変異率が変化することや、単一個体でも変異率が経時的に変化することを明らかにした。一方ペグインターフェロン+リバビリン併用療法の治療効果は、宿主因子、とくにIFNλ関連するIL28BSNPと関連することが明らかになり、これがコア領域の変異とも関連することを明らかした。すなわちコアアミノ酸変異はペグインターフェロン+リバビリン併用療法の治療効果と関連するが、この分布頻度はIL28Bのgenotypeとも相関し、しかも病変の進展とともに変化することを示し、宿主遺伝子変異が何らかのかたちでウイルス変異にも影響を与えていることを明らかにしたものである。またレプリコン系による検討でISDRないしはIRRDRを含むNS5A変異と、その上流の過剰リン酸化部位のセリン残基部位における変異の検討でウイルス増殖や治療反応性に与える影響について検討した。すなわち異なる増殖能を示す複数のレプリコンの検討でHCV増殖能を規定する遺伝子部位を同定し、HCVの抗ウイルス効果(SVR)との関連や、再燃抑止効果、最終的な抗ウイルス効果等と遺伝子変異との関連について検討した。また、インターフェロン治療効果は、年齢・性別・肝線維化等の宿主因子やIL28Bに代表される宿主SNPとも関連していることを明らかにし、遺伝子変異との関連を、遺伝子変異の頻度から、宿主因子との関連を明らかにした。これらは、インターフェロン治療効果の予測マーカーの開発に資する重要な情報になりうるため、臨床的には非常に重要と考えられる。
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