1.HCVレプリコン系を用いたIL28B蛋白によるウイルス複製能変化における機序の検討 H22年に引き続き、HCVコア蛋白変異と密接な関連があるIL28B(インターフェロンλ3)遺伝子の抗ウイルス効果について、HCVレプリコン系を用い検討を行った。H22年度においてλによる抗ウイルス効果はインターフェロンαの相乗作用について報告したが、H23年度はさらにその詳細な機序について検討を行った。すなわち、インターフェロンλ3はインターフェロンαと同様に、ISREの活性化を通じて、抗ウイルス効果を発揮する。一方、ISREの活性化のタイムコースはαとλでは異なっており、αが投与後24時間程度で抗ウイルス効果がピークを迎え、以降は減弱するのに対し、λでは48時間以降も抗ウイルス効果が持続することを明らかとした。さらに詳細な検討を行うため、HCV培養細胞を用いて、マイクロアレイ解析を行い、その結果λで誘導される遺伝子群はαと違いはなく、発現されるタイムコースが、ISREと同様に両者では異なっており、αと比較しλはより長時間にわたり各種インターフェロン誘導遺伝子を発現誘導していることを明らかとした。 2.保存血清を用いた検討 われわれは、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法を施行し、さまざまな経過を辿った多数症例のデータベースとこれらに対応する血清、一部の症例において宿主ゲノムを有している。H22年度に引き続いてさらに症例数を積み重ねて詳細な検討を行ったところ、IL28B遺伝子多型とウイルス遺伝子、とくにコア蛋白の変異には顕著な相関があることを検証した。さらにコア蛋白、IL28B遺伝子多型、さらに宿主因子であるG-GTPの値には密接な関連があることを明らかとした。
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