研究課題
本研究は、レチノイド核内受容体RXRαを分子標的とする合成レチノイド(非環式レチノイド)と、作用機序(標的分子)の異なる薬剤を併用することで、相乗的な肝発癌の抑制効果や肝癌細胞の増殖抑制効果を誘導し、臨床的に有益な新規発癌予防法(薬)の開発を目指すことを目標とする。今年度の研究成果であるが、まず第2/3相臨床試験の結果として、非環式レチノイドが初発肝癌根治術後の再発を有意に抑制(相対リスク比0.267)することを、2010年アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)において報告した。基礎研究では、核内受容体FXRのagonistと非環式レチノイドを併用することで、肝癌細胞に相乗的にアポトーシスが誘導され、細胞増殖が抑制されることを明らかにした(論文準備中)。この相乗効果のメカニズムとして、MAPK/ERKとRXRαのリン酸化抑制が重要であったことより、今回の研究結果は、RXRαの異常リン酸化を解除する非環式レチノイドをkey compoundとした、併用肝発癌化学予防の有効性をあらためて示唆するものと考えられた。またこの考察は、非環式レチノイドとVitamin K_2の併用がMAPK/ERKとRXRαのリン酸化を抑制することでアポトーシスを誘導し、ヒト白血病細胞の増殖を相乗的に抑制した実験結果にも裏付けられるものである。一方、非環式レチノイドと肝硬変患者の栄養状態を改善する分岐鎖アミノ酸製剤の併用によって、レチノイド核内受容体RARβとp21の発現が相乗的に誘導され、肝癌組織移植片の増殖が抑制されることも確認されたが(論文準備中)、非環式レチノイドと既に肝硬変患者に使用されている分岐鎖アミノ酸製剤の併用に相乗効果が認められたことは、今後慢性肝疾患患者の包括的な肝発癌予防対策を考える上で、大変重要な研究結果であると考えられた。
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