研究課題
本研究は、レチノイド核内受容体RXRαを分子標的とする合成レチノイド(非環式レチノイド)と、作用機序(標的分子)の異なる薬剤を併用することで、相乗的な肝発癌の抑制効果や肝癌細胞の増殖抑制効果を誘導し、臨床的に有益な新規発癌予防法(薬)の開発を目指すことを目標とする。今年度の研究成果であるが、まず第II/III相臨床試験(多施設共同試験)の部分集団解析結果として、非環式レチノイド(600mg/day)が、Child-PughAかつ根治治療前主腫瘍径が20mm未満の肝癌治療後肝硬変患者の再発または死亡のリスクを有意に抑制(ハザード比=0.38)することを、2011年アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)消化器癌シンポジウムにおいて報告した。本研究結果は、多中心性肝発癌に対する非環式レチノイドの有効性をより明確に示したものである。基礎研究では、非環式レチノイドがRasの活性化とERKおよびRXRαのリン酸化を抑制し、肝脂肪化と高インスリン血症を改善することで、マウスの肥満関連肝腫瘍形成を抑制すること、また非環式レチノイドと肝硬変患者の栄養状態を改善する分岐鎖アミノ酸製剤の併用によって、IGF-1R、ERKおよびRXRαのリン酸化が抑制され、RARβとp21の発現が相乗的に誘導されることで、肝癌組織移植片の増殖が抑制されることを明らかにした。肥満や糖尿病は肝発癌の危険因子であり、今日の社会的背景を考えれば、肥満に関連した肝発癌の更なる増加が危惧される。分岐鎖アミノ酸製剤は、肥満を合併した肝硬変患者の肝発癌を抑制することが明らかになっているが、非環式レチノイドによる肥満関連肝腫瘍形成の抑制効果と、同剤と分岐鎖アミノ酸の併用による相乗的な腫瘍増殖抑制効果を明らかにした今回の研究結果は、今後の慢性肝疾患患者の包括的な肝発癌予防対策を考える上で、大変重要な研究結果であると考えられた。
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