本年度は、肝細胞癌(肝癌)を対象とし、腫瘍ダイナミクスを早期に反映する新規マーカーの開発に有用な、癌特異的な遺伝子メチル化を検出した。肝癌部、およびその非癌部を用い、19種類のがん抑制遺伝子プロモーターのメチル化レベルをCOBRA法で解析し、非癌部肝と肝癌部を分別するのに適したCpG部位をROC曲線により解析した。その結果、APC遺伝子、GSTP1遺伝子、RASSFIA遺伝子、p16遺伝子の4種の癌抑制遺伝子プロモータ0のメチル化レベルを用いることで、肝癌部と非癌部を効率的に分別できることが明らかとなった(各々のAUCは以下のとおり:APC=0.90086、 GSTP1=0.84742、 RASSF1A=0.79762、 p16=0.79762)。次に、肝癌例の循環血中で、これらの遺伝子座位のメチル化を定量し、全血中よりも、むしろ血清由来DNAからの検出が優れていることを明らかにしている(全血より血清由来DNAの方が、癌由来遺伝子の含有割合が高い)。さらに、我々は血清中のメチル化DNAを高感度に定量化するsemi-nested PCRを応用したMethyLight法を開発した。すなわち、血清から抽出したDNAをBisulfite処理後、メチル化、非メチル化DNAを同時に増幅できるPCR primerを設計し、さらにその増幅構造の内側に、さらにメチル化、非メチル化DNAをそれぞれ特異的に増幅するsemi-nested PCR primer、およびTaqMan probeを設計した。これにより、従来よりも微量検体から高感度に、同一チューブ内で1回の反応系でメチル化DNAと非メチル化DNAの比を知ることが可能となった。肝癌の担癌患者では癌由来DNAが血中に流出することより、メチル化DNAと非メチル化DNAの比が変化することが予想され、現在このアッセイ系を用いて検討中である。
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