研究概要 |
CD133分子は多くの癌腫において癌幹細胞のマーカーとして用いられている。肝細胞癌(HCC)においても癌幹細胞のマーカーとして同定されている。しかしながら、CD133を発現するHCC細胞の生物学的特徴は未だ不明である。我々は、ヒトHCC細胞のCD133分子の発現と各種metalloproteinaseの発現に注目し、HCCにおけるCD133分子発現の意義を検討した。昨年CD133陽性ヒト肝癌細胞ではMMP-2発現が有意に高く、MMP-2関連である癌細胞浸潤能及びVEGF産生能も有意に高いことを報告した。本年は他のmetalloproteinaseも検討した結果、PLC/PRF/5ヒト肝癌細胞(CD133強発現細胞)のCD133分子の発現をsiRNAにてノックダウン(CD133KD)すると、ADAM9発現の有意な低下をRNAレベル及び蛋白レベルで認めた。ADAM9はNK活性化分子のMICA分子のsheddingに関与することを我々は以前報告している(Kohga K, et al Hepatology, 2010)。CD133KD細胞の膜結合型MICAは増加し、逆に可溶性MICAは減少した。このことはCD133KD細胞のNK細胞の細胞傷害活性に対する感受性が増大することが考えられるが、クロムリリース法によりCD133のノックダウンにてNK細胞に対する感受性の増大を確認した。Huh7肝癌細胞(CD133中等度発現細胞)をCD133陽性細胞(CD133(+))と陰性細胞(CD133(-))をマイクロビーズ法にて分離し同様に検討したところ、CD133(+)Huh7細胞のADAM9の発現は、CD133(-)Huh7細胞に比して有意に高く、CD133(+)Huh7細胞の膜結合型MICAの発現はCD133(-)Huh7細胞に比して有意に低く、逆に可溶性MICA産生は高かった。またCD133(+)Huh7細胞の方がCD133(-)Huh7細胞に比してNK細胞に対して抵抗性であることが明らかとなった。以上よりCD133陽性HCC細胞は、ADAM9の発現亢進によりNK細胞に対して抵抗性になることで、その生存に有利な生物学的特性があることが明らかとなった。
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