C型肝炎ウイルス感染による慢性化の成立機序および抗ウイルス治療に対る抵抗性メカニズムの解明には、宿主側因子として、免疫担当細胞におけるシグナル伝達や遺伝子発現について包括的に理解する必要がある。前年度までの解析で、Natural killer (NK)細胞においてInterferon (IFN)-αのシグナル伝達に重要な役割を果たすSignal transducer and activator of transcription (STAT)1の発現量が健常者に比しC型肝炎ウイルス感染患者で有意に高く、NK細胞におけるIFN-αのシグナル伝達が変化していることが明らかとなっていた。 今年度は以下のことが明らかになった。(1)IFN-α刺激によるNK細胞の細胞障害活性の増強度合いが、健常者と対照的に患者においては、明らかに減弱していた。(2)治療前のNK細胞内STAT1発現量と治療開始後のIFN誘導遺伝子発現量が逆相関関係を示した。すなわち治療前のSTAT1発現量が高いほど、投与されたIFN-αに対する応答性が減弱する傾向を認めた。(3)治療前のNK細胞内STAT1発現量が比較的高い症例においては、治療開始後8週目の血中HCV-RNAが残存する傾向を、比較的低い症例においては、消失する傾向を認めた。 ウイルス排除に重要な役割を果たすNK細胞においてシグナル伝達や誘導遺伝子発現を含めたIFN-αに対する反応性が、C型肝炎ウイルス感染患者では変調をきたしていることが明らかになり、治療効果との関連も示唆された。
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