研究課題/領域番号 |
21590844
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木曽 真一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40335352)
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研究分担者 |
筒井 秀作 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10359846)
吉田 雄一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30457014)
渡部 健二 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50379244)
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キーワード | 肝再生 / HB-EGF / ヘパリン結合性 / ノックアウトマウス / HGF |
研究概要 |
【目的】急性肝障害時には、様々なサイトカインや増殖因子が誘導され、その後の肝再生や組織修復に寄与している。我々はこれまでheparin binding EGF-like growth factor(以下HB-EGF)に着目し、同分子が様々な肝障害時や肝再生過程において発現誘導されることを明らかにしてきた。一方で、HB-EGF欠損マウスは心臓発生の異常により胎生期あるいは周産期に死亡するため成体肝における解析は困難である。そこで、今回肝特異的ノックアウトマウスを作製し、HB-EGFの急性肝障害時における役割について検討した。 【方法】1)IFN誘導性Mx1Cre遺伝子を有するHB-EGFflox;Mx1-creマウスにIFN誘導体(pIpC)を投与しKOマウスを作製、対照としてpIpC投与したHB-EGF floxマウス(WTマウス)を用いた。これらのマウスに四塩化炭素1ml/kgを腹腔内投与し、急性肝障害モデルを作成した。投与24時間、48時間、72時間、5日、7日後に屠殺し、血清ALT値、肝再生の指標としてBrdU labeling index、PCNA蛋白発現、さらに再生肝における細胞内シグナル伝達(ERK活性化)について検討した。2)マウス肝細胞株(Hepa1-6)を用い、TNFα誘導性の細胞死に対する、HB-EGFの作用についてMTT assay及びcaspase 3/7 assayを用いて検討した。 【成績】1)血清ALT値は四塩化炭素投与後24時間において、KO群で有意に上昇していた。2)PCNA蛋白の発現は、投与後48時間後においてKO群で有意に低下しており、BrdU labeling indexにおいても同様の傾向を認めた。3)再生肝におけるERK活性化は、KO群で有意に抑制されていた。4)HB-EGFは、マウス肝細胞株においてTNFαによる細胞増殖抑制及び細胞死を有意に改善させた。 【考案】HB-EGF欠損は、マウス急性肝障害を増悪させ、その後の肝再生も抑制した。その分子機構として、HB-EGFによるERK活性化と細胞保護作用が考えられた。 【結語】HB-EGFは急性肝障害時において、肝細胞保護的に働き、引き続き起こる肝再生を促進すると考えられた。
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