研究課題
前年度に引き続きHB-EGF(heparin binding EGF-like growth factor)欠損マウスの急性肝障害時におけるHB-EGFの肝再生に及ぼす作用の検討を行った。データを、再度確認し、論文を作成し投稿した。【目的】我々はこれまでHB-EGFに着目し、同分子が様々な肝障害時や肝再生過程において発現誘導され肝再生に関与することを明らかにしてきた。一方で、HB-EGF欠損マウスは心臓発生の異常により胎生期あるいは周産期に死亡するため成体肝における解析は困難である。そこで、今回Mx1-Cre lox-Pシステムを用い、肝特異的ノックアウトマウスを作製し、HB-EGFの急性肝障害時における役割について検討した。【方法】1)IFN誘導性Mx1Cre遺伝子を有するHB-EGF flox ; Mx1-creマウスにIFN誘導体(pIpC)を投与しKOマウスを作製、対照としてpIpC投与したHB-EGF刊oxマウス(WTマウス)を用いた。これらのマウスに四塩化炭素1ml/kgを腹腔内投与し、急性肝障害モデルを作成した。投与24時間、48時間、72時間、5日、7日後に屠殺し、血清ALT値、肝再生の指標としてBrdU labeling index、PCNA蛋白発現、さらに再生肝における細胞内シグナル伝達(ERK活性化)について検討した。2)マウス肝細胞株(Hepa1-6)を用い、TNFα誘導性のアポトーシスに対するHB-EGFの作用についてMTT assay及びcaspase 3/7 assayを用いて検討した。3)マウス肝細胞株を用いて、in vitroでHB-EGFにより組織修復を、wound hearing assay法にて検討した。【成績】1)血清ALT値は四塩化炭素投与後24時間において、KO群で有意に上昇していた。2)PCNA蛋白の発現は、投与後48時間後においてKO群で有意に低下しており、BrdU labeling indexにおいても同様の傾向を認めた。3)再生肝におけるERK活性化は、KO群で有意に抑制されていた。4)HB-EGFは、TNFαによる肝細胞株のアポトーシスを有意に改善させた。5)wound hearing assay法からもHB-EGFの組織修復作用が確認された。【考案】HB-EGF欠損は、マウス急性肝障害を増悪させ、その後の肝再生も抑制した。その分子機構として、HB-EGFによるERK活性化と細胞保護作用が考えられた。【結語】遺伝子欠損マウスの解析から、HB-EGFは急性肝障害時においては肝細胞保護的に働いている可能性が示唆された。HB-EGFは、欠損マウス解析からも,肝再生過程における重要性が明らかになった。
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