今年度は、臨床サンプルを用いた前処理条件・分析機器条件・データ解析手法の最適化をはかった。臨床サンプルが含有する低分子代謝物の多様性・複雑性を考慮し、主な分析機器としてはGCMSを用いて検討した。水/メタノール/クロロホルム混合溶媒を用いて水溶性/脂溶性代謝物を回収し、(Blight & Dyer法)、誘導体化処理を行った後にGCMSによる解析に供した。さらに解析に必要なサンプル量の検討を行った。これらの予備実験の検討がほぼ終了し、現在、肝臓がん患者の臨床サンプルを用いて検討を行っている。現在、肝がんに対する治療方法としては、肝動脈塞栓療法やエタノール注入、肝臓の部分切除、持続動注化学療法などが存在する。そこで、適切なインフォームドコンセントのもと、肝動脈塞栓療法の前後の患者から治療前後での血清および尿を提供していただき、GC/MSを用いた比較解析を実施している。今後、得られた解析結果と、肝がんの進行度、悪性度、抗がん剤の効果などの臨床的カテゴリーとを照らし合わせることで、肝がん特異的な代謝産物の変動パターンを明らかにするとともに、メタボリックフィンガープリンティングの手法の超早期診断としての適用性について検討する予定である。
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