研究概要 |
1.WT1遺伝子の強発現および発現抑制による肝細胞宿主細胞内蛋白の発現変化 肝細胞癌株(Huh7,Huh7.5.1,HLE)においてWT1発現プラスミドをトランスフェクションしてWT1遺伝子を強発現し、またWT1 siRNAをトランスフェクションしてWT1発現を抑制して、WT1遺伝子の発現を変化させWestern blotにより細胞内蛋白の発現変化をみた。その結果、PCRアレイおよびreal-time RT-PCRの結果と同様に、FLIP,FADD,NF-κBおよびCaspase3,8,9の蛋白発現変化を確認した。さらに、Caspaseについては活性型の指標であるcleaved蛋白がWT1遺伝子の抑制により増強することを確認した。また、Caspase activity assayにおいても確認した。これらの検討によって、肝細胞癌によって強発現するWT1遺伝子が、肝細胞癌において抗アポトーシス作用を有すること。さらにその機序として、FLIPの発現増加、FADDの発現低下、NF-κBの発現低下が関与していることを同定した。 2.HCV発現によるWT1遺伝子発現変化の検討 HCV genotype 2a株であるJFH-1およびHCV genotype 1a株であるH77sを用いたHCV複製系を確立し、HCV発現に伴うWT1発現の変化をみた。その結果、pH77を用いたHCV複製系と同様に、HCVによるWT1遺伝子の発現については明らかな修飾変化はみられなかった。 3.ヒト肝癌組織を用いた検討 これまでに同定したWT1と関連しうるFLIP,FADD,NF-κBについて、ヒト肝細胞癌組織を用いて検討した。その結果、WT1を高発現する組織では、癌部、非癌部ともにFLIPの発現増加がみられた。FADD、NF-κBは非癌部でむしろ発現が増加していたが癌部で差が消失し、肝癌における相対的な発現低下がみられ、in vitroの結果と相同する結果と考えられた。
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