血糖コントロール効果に依存しないGLP-1による脂肪肝改善メカニズムを解明するために、非糖尿病ラットを用いた動物実験を行った。4週齢のWistarラットをコントロール群、高脂肪食群(HFD群)、高脂肪食+GLP-1群(GLP-1群)に分け、コントロール群は通常食、HFD群とGLP-1群は高脂肪食を与え、GLP1群にはexenatide10μg/kg/日を投与した。3か月後の各群の体重は、コントロール群521g、HFD群584g、GLP-1群368gとGLP-1群は有意に低下していた。一日摂食量はコントロール群26.8g、HFD群19.7g、GLP-1群13.7gであったが、体重100gあたりの摂食量はHFD群3.4g、GLP-1群3.7gで差を認めなかった。HFD群の肝組織は顕著な脂肪肝であったが、GLP-1群はコントロール群と同様脂肪化を認めなかった。肝、脂肪、筋組織の代謝状態を、代表的遺伝子のmRNA発現をRT-PCRで定量化することで評価した。コントロール群におけるmRNA発現量を1とすると、肝脂肪酸合成系のEASはHFD群2.2、GLP-1群2.1、ACC1は1.0、0.97と差がなかったが、脂肪酸酸化系のPPARαはHFD群1.2、GLP-1群0.63、CPT1は0.93、0.77、VLDL放出系のapoBは0.97、0.91といずれもGLP-1群で低下してした。脂肪組織では脱共役蛋白質UCP2はHFD群0.96、GLP-1群1.09、UCP3はHFD群1.4、GLP-1群1.9とGLP-1群で上昇し、腓腹筋では脂肪酸燃焼系のCPT1がHFD群1.2、GLP-1群1.6とGLP-1群で上昇していた。これらの結果より、GLP-1による脂肪肝改善メカニズムは肝での脂質合成抑制や酸化促進作用ではなく、筋や脂肪組織における脂質の消費-燃焼作用による可能性が高いことが示唆された。
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