前年度までの研究結果より、著明に進行した肝障害では、細胞周期制御による骨髄細胞移植のみでの予後改善効果には限界がある事が考えられたため、肝細胞そのものの増殖を誘発する事に焦点をあて、肝細胞における細胞周期関連分子の発現を直接制御する事により、細胞増殖を促進する事が可能ではないかと考え研究を行った。肝再生を担う分子メカニズムとして、細胞周期関連分子、特にp27^<Kip1>の発現、分解系に着目し、p27^<Kip1>を介してGO期にある肝細胞をG1期へと再進入することが可能と考えられるエストリオール(E3)ならびにエストラジオール(E2)を用いた肝再生促進モデルで検討を行った。それらの投与によりKi67やBrdUの免疫染色を行ったところ、投与により陽性率が増加したため、細胞周期を促進させ肝再生の一端を担っている事は確認できたが、肝障害モデルマウスに対して投与を行った場合での有意な傷害改善効果は認められなかった。そのためこれらの実験系において実際にp27^<Kip1>を介して再生促進が行われているかを検討する為に、p27^<Kip1>の発現をWestern blottingにて確認を行ったが、有意な発現の変化は認められなかった。またCCl_4を用いた肝障害モデルマウスでの検討よりp27^<Kip1>ノックアウトマウスではCCl_4投与前後でapoptosisに関与する遺伝子の発現増加が認められた事より、肝再生においてp27^<Kip1>は逆に抑制系に関与している可能性も考えられ、現在検討を行っている。
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