研究概要 |
オステオポンチンの転写調節に際する性差を規定する要因として,その遺伝子のプロモーター領域におけるn-155のSNP近傍に結合する結合する新規の雌性細胞固有の転写因子に注目した。先ず,この転写因子を単離,抽出するために,その発現の調節機構に関する基礎的検討を行った。 雄性であるHepG2細胞とLN-CAP細胞及び雌性であるMCF-7細胞とMDA-MB231細胞の核抽出物を用いて,nt-155を含むオリゴヌクレオチドとgel-shift assayを実施した。HepG2細胞,LN-CAP細胞の核抽出物を用いたassayでは,雌性細胞を用いた場合には検出されない結合シグナルが認められ,転写因子の結合性を計算するPC解析ではY染色体でコードされるSRYの反応と考えられた。4種類の全ての細胞の核抽出物で共通したシグナルも認められ,これはFoxD3による反応と考えられた。一方,MCF-7細胞では認められるが,HepG2細胞では存在しないシグナルも検出され,これはPCソフトに登録されていない新規の転写因子と考えられた。この転写因子のシグナルはMCF-7細胞をエストロゲンで処理した後に抽出した核蛋白を用いたassayで増強していた。一方,エストロゲン受容体を欠損したMDA-MB231細胞ではシグナルが軽度であり,雄性細胞でも受容体を発現するLN-CAP細胞では高度の反応が観察された。 以上の検討から,オステオポンチン遺伝子の転写はnt-155のSNPとSRYおよび雌性固有と考えられた新規転写因子の相互作用によって調節されているが,この新規転写因子の発現はエストロゲンによって制御されていることが明らかになった。この成果を基に,新規転写因子の発現が増強した細胞系を確立し,これを用いで同因子を単離する作業を進めている。
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