研究概要 |
ヒトOPN遺伝子のpromoter領域には,ほぼ100%の連鎖不平衡を呈するnt-155などの3SNPsと,これらと独立したnt-443のSNPが存在し,肝発癌における性差を規定している。その転写活性はnt455がdeletionの場合にGに比して6倍以上,nt-443がCの場合はTに比して約2倍高度であった。一方,雄性のHepG2細胞と雌性のMCF-7細胞の核抽出蛋白を用いて,nt-155を含むoligonucleotideとgel-shift assayを実施すると,両細胞に共通した結合シグナルと各細胞に固有の結合シグナルが検出された。これらのうち共通シグナルはnt-155がGに比してdeletionの場合に高度であった。一方,HepG2細胞に固有のシグナルは,alleleによる差異がなく,Y染色体でコードされるSRYの中和抗体で核抽出蛋白を前処理することによって消失した。なお,HepG2細胞におけるSRYの発現は,RT-PCRとWestern blottingによって確認された。また,MCF-7細胞に固有のシグナルは,alleleによる差異は認められないが,エストロゲンを添加した細胞の核抽出蛋白では増強していた。MCF-7細胞を用いたdual lucifease reporter assayでは,OPNの転写活性はエストロゲン添加によって両alleleとも低下した。肝におけるOPN発現は,男性ではSRYを介する転写調節によって亢進する。一方,女性ではエストロゲン応答性の転写因子で抑制されているが,nt-155がdeletionの場合には雄雌両細胞に共通した転写因子を介して亢進すると推定された。これら転写因子によるOPNの発現調節は,腫瘍免疫ないしは細胞外マトリックスとしての作用を介して,肝発癌における性差に関与していると考えられた。なお,雄性,雌性細胞にともに見られに関しては,Fox系の各種転写因子の発現をRT-PCRで確認し,共通して見られるのはFoxD3であることから,そのknock downの実験を進めている。
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