研究概要 |
本研究は、脂肪性肝炎の病態下で自然免疫系細胞である肝マクロファージ(Kupffer細胞)、NK細胞およびNKT細胞が肝の糖・脂質代謝および炎症・線維化進展、肝発癌に如何に関与しているかを詳細に解析することにより、免疫学的側面からNASHに対する新たな病態進行防止および治療戦略を構築することを目的としている。本年度は、メタボリックシンドロームモデル動物であるKK-Ayマウスにおける肝NKT細胞の発現および機能異常について検討を加えた。肝組織中の単核球を採取してFACS解析したところ、KK-AyマウスではコントロールのC57B16マウスと比較してNKT細胞分画が減少しており、この変化は高脂肪食負荷でより顕著になった。また、KK-AyマウスではNKT細胞特異的リガンドであるα-galactosylceramide(GalCer)を投与した際の肝内サイトカイン誘導(IL-4, IFN-γ)が著明に抑制されており、同マウスでは肝NKT細胞が量的のみならず機能的にも障害されていることが判明した。興味深いことに、同マウスにチアゾリジン系誘導体であるピオグリタゾンを投与すると、肝NKT細胞分画が増加し、GalCer投与によるIL-4, IFN-γ産生能も回復することを見出した。さらに、同マウスでのNKT細胞減少にはアポトーシス誘導が関与しており、ピオグリタゾンはNKT細胞アポトーシスを減少させることが明らかになった。以上より、脂肪性肝炎の病態形成には肝NKT細胞の発現異常が深く関与しており、チアゾリジン系誘導体による脂肪性肝炎改善にはNKT細胞アポトーシス阻止作用が寄与している可能性が示唆された。
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