研究課題
慢性C型肝炎は本邦でも200万人以上の患者が存在し、肝臓癌の原因の80%以上を占める。今日の標準治療であるペグインターフェロンとリバビリンの組み合わせでは約半数の患者でウイルス排除が起こるに過ぎず、治療効果としては全く不十分である。今日期待を持って検討されている治験はペグインターフェロンとリバビリンの新たな抗ウイルス剤である、プロテアーゼ阻害薬を加える治療である。この治療法により今まで治療を行いウイルスがいったん消失した後に再燃したrelapserは90%以上でウイルスが排除されるが、ウイルスが現在の標準療法で2log以上低下しなかった場合は、新たな治療でもウイルス排除は30%にとどまる。HCVはRNAウイルスで遺伝子型が6つに大きく分けられるが、プロテアーゼ阻害薬ではすべての遺伝子型のカバーは難しく、いったん耐性株が出現すると、すべてのプロテアーゼ阻害剤に耐性になる可能性がある。ウイルスに直接作用する抗ウイルス剤はすべてこのようなジレンマをはらんでおり、治療上別のストラテジーが必要となる。そこで我々が考案したのはウイルスが増殖するのに必要な宿主因子を標的にした治療法であり、すべての遺伝子型のHCVに有効でかつ、IN VITROの検討でも耐性のリスクは少ないと考えられる。これまでの検討よりサイクロフィリンファミリー(Cyp)はウイルス増殖に必須の宿主因子であり、Cypの働きを阻害することによりHCVの増殖が抑えられる、またCyp阻害薬の中でもこれまでは副作用を減らすために、カルシニューリン (CN)との結合の親和性が重視されてきたが、これまでの化合物ではレポーターアッセイでCNとの親和性が低くても、実際には阻害活性があり、今回はCNとの結合に全く影響を及ぼさずかつCyp活性を抑制する物質を探索的に検討し、毒性も治療域ではin vitroで認められず、かつCypの数倍の抗ウイルス活性をもつ物質を見いだした。
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