本研究の目的は、劇症肝炎で致死的な脳浮腫を惹起する肝性脳症起因蛋白を同定し、その病理作用、特に脳アストロサイトの障害作用を明らかにすることである。まず、TRECK (toxin receptor-mediated cell knock out)肝炎モデルマウスを利用して、急速な脳浮腫をともなう重度肝障害を惹起した。1000ng/kg BWのジフテリア毒素の腹腔内投与によって、2日後には、TRECKマウスに黄疸が発現し、動作もにぶくなった。一方、5ml容量のラジアルフローバイオリアクター(RFB)にアパタイトファイバーカラムを充填し、マウス不死化肝細胞、内皮細胞、星細胞を共培養し、肝臓組織に類似したオルガノイドを作製した。平成22年度には、脳浮腫の発症・改善に関して、小動物用MRIで検討する予定である。また、埋め込み型バイオ人工肝臓装着TRECK肝炎モデルマウスを作製し、致死量ヒトジフテリア毒素への脳症予防効果の確認(救命効果)を血液生化学検査およびMRI検査で行う。ヒトジフテリア毒素によって急性肝不全を惹起したTRECK肝炎モデルマウスと、バイオ人工肝臓移植によって救命したTRECK肝炎モデルマウスの血漿中の脳症惹起起因蛋白の発現比較おこない、平成23年度には、脳症起因蛋白候補が実際に「急速な脳浮腫」を惹起するか検証実験を行う。さらに、ELISAでの血漿診断法を開発する。
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