研究概要 |
肥満、耐糖能異常、高脂血症などヒトの生活習慣病類似病態を呈する生後7週Rの雄性KKA^yマウスにメチオニン・コリン欠乏食(MCD)を4週間摂取させNASHモデルを作製した。MCDと同時に、通常餌投与対照(A)群、MCD+Zn,Se微量元素強化餌投与(B)群、MCD+分岐鎖アミノ酸(BCAA)強化餌投与(C)群、MCD+微量元素+BCAA強化餌投与(D)群、MCD+微量元素+BCAA+ビタミン強化餌投与(E)群を作製した。5週目に殺戮し、1)体重、肝重量を測定し肝体重比の算出、2)血液生化学的検査、3)肝組織学的評価、4)抗8-hydro-2'-deoxyguanosine(80hdG)抗体、4hydroxynonenal抗体を用いた免疫組織化学による酸化ストレスの評価、5)炎症系を観察するためリン酸化(p)NFκB、NFκB各抗体を用いて、脂質代謝系を観察するため抗SREBP-1c、pAcelCoA抗体、またERstress関連では抗Grp78,PERK,pELF,ATF6抗体によるWestern Blotを行った。平均肝体重比はA群、B群、C群、D群、E群に従い低値となった。血液生化学検査ではC,D,E群の総ビリルビン、LDH,ALT,AST,およびヒアルロン酸の値が他の群に比較して有意に低値であった。肝組織像の検討ではC,D,E群の脂肪沈着、細胞浸潤、マロリー・デンク小体、線維化の程度が他の群に比較して改善していた。また免疫組織化学による酸化ストレスの検討でC,D,E群の抗酸化作用も他の群に比較して有意に改善していた。Western Blotでは、微量栄養素の種類が増えるにつれ脂質代謝系のSREBP-1c発現が減弱する一方pAcelCoA発現は増加し、ERstress関連のGrp78,PERK,pELF,ATF6の発現はE群が最も減少していた。炎症系のpNFκBの発現は微量栄養素の種類が増えるにつれ減少していた。 以上の結果から、分岐鎖アミノ酸はNASHの発症進展に関わる脂質代謝異常、ERstress、酸化ストレス、炎症に対し抑制的に作用するとともに微量元素、ビタミン類が更に効果を増強することが明らかとなり、NASHに対する新たな治療薬として活用できる可能性も推察された.
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