培養細胞での感染増殖が可能なHCV JFH-1株が分離された患者血清を用い、チンパンジーへの感染実験を行った結果、培養細胞由来JFH-1ウイルスは接種後短期にウイルス排除が認められたのに対し、JFH-1株患者血清接種チンパンジーでは感染が遷延化していた。そこで、患者血清接種チンパンジーからHCVを分離し、全ORF領域の塩基配列を確認したところ、感染後期ではJFH-1株と比べ17個の変異を認め、これらの変異が感染の遷延化に関与していると考えられた。そこで、これらの変異を持ったJHF-1株を作製し、培養細胞中での複製能を比較してみたところ、この生体内適応変異株は培養細胞内に導入すると通常のJFH-1株に比べ細胞中でのウイルス量が低く、培養上清中でのウイルス量は高いという結果であった。レプリコンを用いた検討では、この適応変異株では培養細胞中での増殖能は、通常のJFH-1株に比べ低下していた。さらにHCVレセプターを発現していない細胞を用いシングルサイクルウイルス生成システムでその特徴を詳細に検討してみたところ、この適応変異株は細胞内での低い複製能に関わらず、感染性ウイルス粒子の組立てが増強していることがわかった。今後は、さらに生体内での増殖能の検討のため、ヒト肝細胞移植マウスでの感染実験を行い、さらに宿主に与える影響の検討のため適応変異株が感染している状態での宿主細胞のアポトーシスに与える影響も明らかにしていく予定である。
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