研究概要 |
膵性糖尿病患者に生じる重症低血糖を回避することを目的として、患者の血糖推移を連続血糖モニタリング装置で解析した。膵性糖尿病患者では、膵外分泌機能低下による糖質消化吸収不良が血糖変動に影響していることが予想されたが、消化酵素製剤を補充することにより食後の血糖値は症例による差はなく上昇していた。しかしながら、補充する酵素の量により血糖増加の程度だけではなく、血糖増加ピーク到達時間の変化も認められた。したがって、難消化性の炭水化物などを多く含む食事内容によっては、消化酵素の作用が遷延して血糖値の上昇までの時間が遅れ、治療に用いられるインスリンの作用とのタイミング不良による低血糖が生じている可能性が示唆された。この現象を回避するためには、消化酵素補充量だけではなく食事内容による作用時間の異なるインスリンの使い分けなどが必要と考えられた。一方,夜間空腹時の血糖推移の解析においては、深夜0時から2時ころまでの高血糖が生じているものの、その後早朝にかけて急激に血糖が低値となっている症例が多く見受けられた。夜間の低血糖回避のためインスリン量が少量に抑えられているにもかかわらず、このような現象を認める症例が多いことから、他のglucose regulating hormoneの影響が関与していることが示唆された。現時点では,このような血糖変動が著しいことに対処するためには頻回の血糖測定に応じてインスリンを少量持続投与しながらの微調整を行うという方法が可能であるが、さらに患者のQOLと治療の安全性を求める必要性がある。
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