研究概要 |
本年度は,昨年度から引き続き膵性糖尿病患者に生じる重症低血糖を回避することを目的として、持続血糖モニタリングによって患者の血糖変動をパターン化し,インスリン補充や膵酵素補充と低血糖の発現の関係を解析した.結果1)慢性膵炎患者においても夜間から早朝にかけての無自覚低血糖後に生じる急激な血糖上昇,いわゆるsomogyi効果を認めた。2)同じ量のインスリンと酵素補充にても低血糖が生じる時と生じない時がある。3)無自覚低血糖後の血糖変動を単位時間当たりに上昇した血糖値とインスリン抵抗性に相関が認められる。の3点が判明した。結果1)については,膵性糖尿病患者においてはグルカゴン分泌も低下しているため,somgyi効果が生じにくいとされていたが,グルカゴン以外のインスリン拮抗ホルモンの作用で代償されていると考えられた。結果2)については、なんらかのglucose regulating hormoneが関与していることが考えられ,基礎検討として,早朝空腹時の血中DPP-4活性を測定した.さらに次年度に同検体で他のglucose regulating hormoneのアッセイを実施する予定である.結果3)については,直接本研究の目的に関係しないが,血糖値の連続測定がインスリン抵抗性の新たな指標となる新知見であり,前年度に収集した患者基礎データーから既に得られている各種インスリン抵抗性の指標との相関を検討している.また,本検討で副次的に得られている膵性糖尿病患者における膵機能検査(呼気検査)の内容について,総説をGas Biology Research in Clinical Practiceに掲載した.また,前年度得られた患者基礎データーと持続血糖モニタリングの結果について「Glycemic characteristics in continuously monitored patients with pancreatic diabebes treating with pancreatic enzyme replacement therapy.」のタイトルで発表した.
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