膵性糖尿病における重症低血糖回避のための新規検査・治療法の確立を目的に、持続血糖モニタリングによって患者の血糖変動をパターン化し、従来から用いられている血糖コントロール指標との関連性を検討した。血糖コントロールにおいては、糖尿病合併症をもたらす血糖値の上昇と低血糖をもたらす血糖値の下降の両方が重要である。従来の血糖コントロールのパラメータであるHbAlcやGAなどは、合併症出現のサロゲートマーカーであり、低血糖の出現を反映しないことがこれまで指摘されてきた。そこで、低血糖の出現を示すサロゲートマーカーが必要と考えられた。 研究期間の3年間で、目標の60症例には1症例届かず、59症例(膵性糖尿病11名、1型糖尿病11名、2型糖尿病37名)で、症例登録を終了したが、統計解析は可能であった。持続血糖モニタリングから得られる平均血糖値(MGC)、血糖値のばらつきを表す標準偏差(SD)、血糖の平均変動幅(MAGE)、5分間に血糖が上昇する正の傾き変化(positive glucose slope:以下PGS)、下降する負の傾き変化(negative glucose slope:以下NGS)などの指標のうち、MGCとSD、PGS、NGSは低血糖出現のサロゲートマーカーと考える事ができた。PGSやNGSをそれぞれパラメータにして、膵性糖尿病患者に消化酵素補充やインスリン補充の用量設定を行う事は、膵性糖尿病における重症低血糖回避のため有用であると考えられた。また、膵性糖尿病に限らず、1型糖尿病や2型糖尿病において、SDと血中Cペプチド値に負の相関を認め、さらにSDはインスリン抵抗性の指標である血中アディポネクチン値(高分子)と相関した。後者から、持続血糖モニタリングを施行してSDを求めることにより簡易にインスリン抵抗性を検出することができる可能性も示唆された。以上の結果を現在Hirosaki Medical Journalに投稿中である。
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