研究概要 |
1.Irf2^<-/->マウスの膵外分泌異常が、他の系で再現されるかを、AR42J細胞を用いて検討した。レトロウイルスを用いて、IRF2を過剰発現させた細胞(GFPirf2)、DNA結合部位のみを過剰発現させた細胞(GFPirf2dn)、コントロール細胞(GFPcont)を作成し、コレシストキニン,カルシウムイオノフォア,cAMPアゴニストで分泌を刺激した。GFPirf2dn細胞ではアミラーゼ分泌は抑制され、GFPirf2細胞では亢進した。以上から、AR42J細胞でも分泌異常が再現され、IRF2が調節性外分泌に重要な役割を果たしていることが示された。 2.Irf2^<-/->膵を電子顕微鏡で観察すると細胞内に多数の空胞が見られ、ウエスタンブロットでは微小管結合蛋白質LC3の膜結合型(LC3-II)が増加しており、オートファジーが進行していた。また、Irf2^<-/->膵ではトリプシン活性が亢進していた。HE染色標本からでは膵炎所見は明らかではないが、膵炎が進行していることをこれらは示している。 3.Irf2^<-/->ウスではI型インターフェロンシグナルが常に亢進状態となっている。受容体を欠損したダブルノックアウトマウスIrf2^<-/->Ifnar1^<-/->マウスを作成したが、膵の異常は解消されず、過剰なI型インターフェロンシグナルはその原因ではなかった。 4.Irf2^<-/->マウスとIrf2^<-/->マウスの唾液腺を切除し、形態、酵素顆粒の分布を検討したが、差異は認めなかった。 5.野生型マウスにセルレイン膵炎を惹起し、IRF2の発現の変化を検討した。膵炎発症時IRF2の発現低下が認められ、この発現低下はセルレイン初回注射後1時間でも認めたことから膵炎発症のごく初期の段階でIRF2が関与している可能性が示唆された。
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