インターフェロン(IFN)制御因子(IRF)はIFNシグナルを調節する転写因子であるが、我々はIRF2遺伝子欠損マウスの膵臓に異常を発見した。その異常は調節性外分泌障害から生じており、このマウスが急性膵炎の発症初期を模倣するモデルであることを明らかにした。本年はこのマウスを用いて、急性膵炎のより直接的な原因遺伝子の解明を目的とした。 Irf2^<+/->、Irf2-/-膵臓の遺伝子発現レベルの変化をマイクロアレイを用いて検討した。全膵および単離腺房における比較より、Irf2^<-/->膵で発現が高度に変化する遺伝子群(亢進39個、低下7個)を同定した。急性膵炎の発症に関与する因子であるならば、急性膵炎時にもIrf2^<-/->膵でみられる発現変化と同様な変化が生じると考えられる。そこで、野生型マウスにセルレイン急性膵炎を発症させ、そのmRNAの変化を検討した。また、遺伝子操作を行い昨年度作成したラット膵外分泌細胞株AR42J細胞(IRF2過剰発現、IRF2dominant-negative発現)での発現変化も検討した。以上から絞り込みを行い、Irf2^<-/->マウスに生じている調節性外分泌障害の原因遺伝子として、2個の候補遺伝子を同定した。両者ともカルシウム結合蛋白であり、カルシウムシグナルに錯乱を起こさせ、分泌障害を生じているものと推察れた。 今後は、標的遺伝子の同定を含め、IRF2が関与する膵外分泌機構の詳細な分子メカニズムの解明が必要である。また、その分子機構が急性膵炎発症にどのように関与しているのかを明らかにしてゆく。その先に急性膵炎の新たな治療法の開発のヒントや予防の可能性が見えてくる。
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