本年度は、臨床での造影超音波内視鏡による慢性膵炎診断を行いながら、動物モデルによる膵実質の造影超音波検査成績を評価することを予定としていた。しかし、実際の臨床における造影超音波内視鏡検査では、早期慢性膵炎症例において様々な画像変化動態を示すことが明らかとなった。特に、造影後期相では超音波で観察していた高エコー所見が不明瞭化するものと明瞭化するものに大別され、線維化周囲のマクロファージの存在がマイクロバブルを有する造影剤を貪食するという仮定からは、より明瞭化したものがいわゆる慢性膵炎に関連した繊維化であろうと考えたが、これらの画像変化はあくまで動的な変化を主観的に判断しているだけであり、それほど大量には存在しないマクロファージが貪食するエコー変化を判断するには客観性に乏しいと考えられた。このため、動物実験を開始する前にまずは造影超音波検査による画像変化を客観的に評価する方法を確立することが先決と考え、動画画像変化を解析するためのソフトウエアを準備し、コンピューターによる画像解析および動態の定量化を試みた。これまで6例の早期慢性膵炎症例に対して造影超音波検査を行っており、現在はその画像変化動態についてソフトウエアを用いて解析検討を行っている。早期慢性膵炎診断については、観察者間の差異が大きいこともあり、今回検討している造影超音波画像変化動態の定量化がなされれば、超音波による早期慢性膵炎診断は飛躍的に発展する可能性が高い。来年度以降もこの解析を続け、同時に動物モデルでの評価も行っていく。
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