内臓脂肪蓄積が発症の基盤にあるメタボリックシンドロームでは脂肪肝などの消化器をはじめとする内臓の障害が発症する可能性がある。肥満者では膵脂肪置換症(膵リポマトーシス)の発症や、血中膵酵素が低値となることが報告されており、膵にも何らかの障害を発症する可能性が示唆される。メタボリックシンドロームの高リスク者である内臓脂肪蓄積型肥満者において膵障害が発症する可能性があるか否かを明らかにするために、CT画像による膵の形態学的変化と血中アミラーゼ値について検討した。過去1年間に某健診センターにおいて腹部CT検査を含めた生活習慣病健診を受診した168名(男133名、女35名)を対象とした。単純CT画像による膵への脂肪沈着の評価は、(1)辺縁の変化、(2)小葉間の隙間、(3)膵実質のCT値の低下・面積の減少に着目して、(1)変化なし、(2)軽度変化あり、(3)明らかな脂肪沈着あり、の3群に分けて検討した。単純CTによる膵画像では、内臓脂肪面積≧100cm^2の内臓肥満者114例中、軽度変化は66例(58%)、脂肪沈着ありは22例(19%)であったのに対し、内臓脂肪面積<100cm^2の非内臓肥満者44例中、軽度変化は4例(9%)、脂肪沈着ありは1例(2%)であり、膵の変化は内臓肥満者で有意に高頻度に認められた。すなわち、内臓脂肪の蓄積が膵への脂肪沈着に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。血中アミラーゼ値は内臓脂肪量≧100cm^2の内臓蓄積型肥満者において有意に低値であった。また、膵への脂肪沈着を認めた症例では血中アディポネクチン値は有意に低値であった。今後、メタボリックシンドローム該当者における膵内外分泌機能障害および膵障害に及ぼすアディポサイトカインの影響などについて詳細な検討が必要であると考えられる。
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