研究概要 |
【研究1】内視鏡画像解析により拡大内視鏡の微小血管像を抽出し,特徴量を解析したところ,微小血管の形状不均一,分布の非対称性,配列の不規則性が癌の特徴的所見であった.コンピューターを用い完全に定量化を試みたが,現在のところ,血管の抽出は可能であるが,数量化までは至っていない.従って本研究から求めた癌の微小血管像の形態学的所見を指標にし,未知の症例を対象とし,全国の施設で前向き試験を行い,診断能を検証した.1094例の患者が対象に組み入れられ,癌20病変,非癌351病変が発見された.拡大内視鏡の正診率98.1%,感度85.7%,特異度99.4%であり,非常に高い診断能を有していることが判明した.また,本診断法の限界は,平坦な褪色調を示す未分化型癌であることが判明した.従って,拡大内視鏡による内視鏡診断の適応は,発赤・同色調病変であることが判明した.本成績は,現在英語論文にまとめ投稿中である. 【研究2】内視鏡画像解析を行った際に上皮内に存在する血管を不可視化する物質(白色不透明物質white opaque substance, WOS)を発見した.さまざまな検討の結果,WOSの正体は,腫瘍上皮内に集積した脂肪滴であることがを証明し報告した.すなわち,本来は物質の吸収能を有さない胃粘膜上皮細胞が,腫瘍化することにより脂肪の吸収能を獲得したと考察した.本知見を応用し,経口的脂肪負荷試験を開発した.経口的に乳化脂肪を負荷すると胃上皮性腫瘍が白色化したことが,研究の結果明らかになった.経口的脂肪負荷試験は,腫瘍の早期発見や正確な内視鏡診断に寄与すると考え,臨床的有用性を証明するために臨床試験を開始した.
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