研究課題
【目的】心血管再生医療に関するトランスレーショナル研究には、今まで一定の限界があった。生体内における血管新生および心筋の生存には、エリスロポエチン(EPO)のアシアロ体であるアシアロEPO(AEPO)が生理的に重要な働きをしている。AEPOの作用機序を明らかにすることで、心血管再生医療の前臨床的な基盤研究を行う。【方法と結果】(1)Wister ratにモノクロタリン誘発による肺血管障害・肺高血圧モデルを作成し、各種EPO誘導体投与により治療した。EPO投与により肺血管内皮障害が抑制され右心機能が改善したが、AEPOやCEPO(カルバミルEPO)投与は無効であった。AEPOは速やかに肝臓で代謝され血中濃度が上昇しないことが影響した。CEPOは血中濃度が上昇したが無効であった。肺血管組織での分子生物学的解析も同様の結果を示した。このことから、血管内皮には造血系と同様にEPOホモ受容体(EPOR/EPOR)が発現していることが分かる。(2)White mouse(ICR)およびBlack mouse(C57/BL)で下肢虚血モデルを作成し、各種EPO誘導体投与により治療した。血管新生作用はAEPO>>EPO=CEPOであり、またこれと同じ力価で虚血肢局所にIL-6が誘導されていた。CEPOにEPO同等の血管新生作用があることから、この作用はEPOヘテロ受容体(EPOR/βc)を介した作用であることが分かる。ヒト線維芽細胞上にヒト臍帯静脈血管内皮細胞を播種し、体外での血管新生を再現した。EPOおよびAEPOは同等の血管新生作用を有し、この作用は抗IL-6抗体の添加によって一部阻害された。このことから、EPOの血管新生作用の少なくとも一部はEPOヘテロ受容体を介したIL-6分泌による間接作用であることが示された。また、Heparin-agarose gelを用いてヘパリン親和性の検討を行ったところ、ヘパリン親和性の強度は:VEGF>AEPO>>EPO=0であった。AEPOには強力な組織親和性があることがわかった。【展望】今後さらに心筋保護作用、中枢神経保護作用などの検討を加える予定である。
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